虹へ向かって飛ぼう
*最悪な目覚めの朝は、一日最悪なのか?
あれから時々見る夢は、知らない誰かとのベッドシーン。
最悪なクリスマスイブに起こった、まるでドラマのようなあり得ない本当の話。
なんだか最悪な目覚め。
「行ってきます」
小さく言った言葉は、誰にも聞かれたくないから。だったら言わなきゃいいのにって思うけど。
毎日、家族に気付かれないように家を出る。それが私、河原 椿の毎日だった。
それなのに今日はまんまと寝坊して、リビングでは賑やかに楽しそうに話す家族の声を聞くハメになった。
もうそれだけで憂鬱なのに、家を出た目の前には、田代 暖の姿があった。
「……」
「……」
私を見るなり眉間にシワが寄ったことを私は見逃さなかった。同じ学校の同じクラスなのに挨拶もない。まるで「ちっ」と舌打ちが聞こえてきそうな怪訝な顔。
これが数ヶ月前まで彼だった男の顔かと思うと吐き気がした。