嘘つき運命ごっこ

運命の人

「芙結ー!ふーゆー!」


学校へ行こうと家を出ると、タイミングよく名前を呼ぶ声に、振り向いた。

そこには、明るい茶髪を揺らしながら、手を振って駆け寄ってくる幼なじみの男子。


「待ってよ、芙結。一緒に行こうっていつも言ってんのに」

「高校生になってまで、恥ずかしいよ。瑞貴とは、付き合ってるわけでもないのにさ」

「だから、それもいつも言ってるよ。俺の彼女になってって」


この会話、もう何回目だろう。

幼稚園の頃からだから、多すぎて覚えてない。

そして、私は決められたセリフのように、いつも通りの言葉を口にする。


「ダメだよ、瑞貴とは繋がってないから。赤い糸」


自分の右手の小指を見る。

相変わらず、何も見えない。


私には、運命の相手を見つけあった同士の赤い糸が見えるらしい。


恋人同士だからといって、必ずしもその相手と繋がっているわけじゃない。

だから、本当にたまにしか見えない。

相手を見つければ、きっと自分の糸も見えるようになる。



ママとパパは、五年前に離婚した。


私、楯岡芙結(たておか ふゆ)は、自分の赤い糸を見つけられないまま、高校生一年生になっていた。

< 4 / 261 >

この作品をシェア

pagetop