嘘つき運命ごっこ
「嘘じゃない、おいしい。作ってくれて、ありがとう。……芙結」


ぎこちなく、目をそらされて、ほぼ棒読みで発せられたその言葉は、今度こそ聞き間違いなんかじゃない。

淡い光のせい?
顔が、赤いように見えるのは。


年上の、しかも男の人にこんなことを思ったら、怒られるかもしれない。

でも。

……可愛い。


依然目を合わせてくれないその顔を見つめて、私は口角を上げた。


「よかったです」


私が背中に隠した右手から、赤い糸が伸びている。

それは、まっすぐに学さんに繋がっていた。
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