この結婚が間違っているとわかってる

 ***

――午後二時。

麗らかな日差しが差し込むオフィスの廊下を進みながら、小花はゆっくりと深呼吸を繰り返す。こうすることで少しだけ緊張が和らぐ気がした。

「あっ、こんなところで小花を発見。お疲れ~」

突然背後から声がして肩をポンとたたかれた。小花は驚きから体がビクッと跳ねる。

大事に抱えていたバインダーをうっかり落としそうになり、慌てて持ち直した。けれど、一緒に持っていたボイスレコーダーを固い床に落としてしまう。

「ごめん。大丈夫⁉」

小花に声を掛けたのは総務部秘書課に所属する同期の美波だ。まさか小花がここまで驚くとは思わなかったのだろう。美波は小花が落としたボイスレコーダーを慌てて拾った。

「壊れてないかな」

申し訳なさそうに眉を下げる美波から小花はボイスレコーダーを受け取った。

電源を入れると画面が表示される。録音機能を確かめるためボタンを押して自分の声を吹き込むと無事に再生されたので壊れてはなさそうだ。

「大丈夫。ちゃんと録音できてるから」
「よかった~」

美波がホッとしたように胸を撫で下ろした。小花もまた所属部署の備品なので落として壊さなくてよかったとホッと息をついた。
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