岩泉誠太郎の恋

彼女を守りたい

「え!そんなこと言っちゃったの?大丈夫?誠太郎、刺されるんじゃない?」

冗談抜きで身の危険を感じる。しばらくは警戒が必要そうだ。

「まあ、いつかは通る道だろ?それがほんの少し早まっただけだよ」

「まじかー。誠太郎、本当まじなんだね、、」

啓介の言う『まじ』が、好きという意味だとしたら、本当にまじかは自分でもよくわからなかった。

「でもそうだよなー。今日の椿ちゃんはかわいかったもんねー」

「え?啓介、お前、まさか、、」

「いやいや、ないよ?誠太郎が珍しくその気になってる上に、あんなにわかりやすく誠太郎のことが好きな子なんだよ?さすがにないわー」

啓介のニヤニヤ顔がむかつく。

「でもこうなると、当分椿ちゃんは完全に遠ざけておかないと、本当やばいかもね?まあ、丁度良かったのかも。勉強会に誠太郎呼ぶ?って聞いたら、全力で拒否されたから」

何なんだ、その地味に傷つく情報は、、

「なら、会えない時間で愛を育む為にも、俺が一生懸命誠太郎の情報を椿ちゃんに流し、誠太郎沼にどっぷり浸からせ、彼女のハートをしっかりと繋ぎ止めておくよ!」

「それいいな。俺も情報が欲しい」

「えー。だって誠太郎は既にどっぷりはまってそうだし?」

「お前のそのにやけ顔、むかつくんだよ!」

「そう怒るなって。椿ちゃんの情報、欲しいんだろー?」

駄目だ。もう完全に啓介に弄ばれている。むかつくが、啓介の協力は必須だ。甘んじて受け入れるしかない。

その後、嵐は吹き荒れたが、それほど酷くもなかった。何人かはしつこく食い下がってきたが、大半はあっさりとしたものだった。以前は女同士で争いが起こっていたから凄絶だったのだ。

だがその余波は、別の形でやってきた。

「ハーレム効果で平和だったのが嘘のように女子達がたかりにくるんですけどー」

直接俺に近づけないせいで、啓介のような俺に近い友人を通じて近づこうとする子達がわいてきたのだ。

「本当すまん」

「俺は慣れてるから平気だけど、椿ちゃんの方が心配。俺に流してくれれば対処するのに、自分でどうにかしてるっぽいんだよね。下手にかばうと激化するし、本当たち悪い」

「啓介も彼女と距離をとった方がいいんじゃないか?」

「うーん。椿ちゃん、俺を見捨てられないみたいで、彼女なりの妥協案なのか、勉強会の回数と時間を減らしたいって言われちゃってさ。しばらく休もうか?って提案したけど、大丈夫って言われて。そしたらそれ以上こっちからは何も言えないじゃん?」

結局解決策は見つからず、現状維持でやり過ごすしかなかった。恋人システムを崩壊させたのは完全に失敗だったが、あとの祭りだ。
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