何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
瞬が自転車にまたがり、自分の家に向けて出発しようとした瞬間、瞬の後ろからドサっと言う音がした。

瞬が振り向くと、郁が膝をついて胸を押さえていた。

「ん?郁?大丈夫か?」

すぐに瞬が駆け寄って郁の顔を見ると、暗闇の中照らされているわずかな電灯の光でもすぐにわかるほど、顔色が真っ青だった。

郁は苦しそうに肩で息をしている。

「…おい!しっかりしろ。胸、苦しいのか!?」

「…大丈夫…久しぶりに発作が出たみたい…ごめんね、ホームの先生呼んで…」


瞬はすぐに施設に駆け込み、すぐそばにいた施設の女性職員の佐藤に声をかけた。

「郁が、胸を押さえて…!」

瞬が話し終わらないうちに、ただ事では無いと感じ、走り出す佐藤。

駆けつけた佐藤の前には、完全に床に倒れた状態になっており、ピクリとも動かない郁の姿があった。

佐藤の後ろから郁の姿を見て、息を飲む瞬。

「おーい!!郁ちゃん!!わかる!?」

佐藤が郁を仰向けにし、大声で話しながら郁の顔と肩を叩くも、全く反応は無い。

佐藤は動揺しながらも、すぐに呼吸と脈を確認している。

「まずいわ…脈が触れない。」

郁が入所して以来初めての事態に、血の気が引くのを感じる佐藤。

「…君、急いで救急車を呼んでくれる?あと、中の職員に郁ちゃんが発作を起こしたって伝えて!…早く!」

「……わかりました!」

瞬は震える手で携帯を取り出し、119番にかけた。

「郁ちゃん!だめだよ、頑張って!」


赤色灯を灯した救急車のサイレンが、遠くの方にかすかに聞こえ始めた。
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