何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
郁が退院して2ヶ月が経ったある日、珍しく早く帰って来ることができた碧は、郁と一緒の時間に眠ることができた。

一緒のベッドに入る碧と郁。
碧が郁の髪を撫でる。

おやすみ、と言って碧は郁にキスをした。


「…碧?聞きたいことがあるの」
郁が小さい声で言う。

「どうしたの?」

「…」

「…郁?」

「…やっぱり、胸の手術の傷跡が気になる?」

「化膿していないかは気になるけど」

「そういう話じゃない…男として、こんな大きな傷跡は気になっちゃうかってこと」

無意識に唇を尖らせながら郁が喋る。

「気になるわけないだろ。いきなりどうしたの?」

そう言って、碧は郁を抱きしめる。

「…私の体を求めてくれないのは、傷のせいじゃないなら、私に魅力がないから?」

「…そんなはずない…」
いきなりの郁からの問いに、驚く碧。

郁の体は、移植手術をしたことで、性行為をしても問題がない体となっていた。

しかし、薬の影響で感染症にかかりやすい体である郁。

ただでさえ大学生活で疲れている今、決して無理はさせてはいけないと考え、碧は自分の気持ちを抑えていた。

「郁は、無理をしちゃいけないから…」

「やっぱり傷が気になるんだね。こんなにたくさん傷跡がある女、普通は嫌だよね。」

普段拗ねることなど無い郁が、珍しく感情を露わにして、碧の言葉を遮り、そっぽを向いた。
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