ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 私はずっと、セックスに抵抗があった。

 二十歳頃に一度だけ付き合った人とも、最後まではしなかった。行為自体が嫌なわけではなくて、その先に妊娠の可能性があるというのが、私をためらわせるのだ。

 母に愛されなかった私は、将来子どもを持ちたいという願望がない。もしかしたら自分も母と同じく育児放棄をしてしまうかもしれない、と考えると怖いから。

 小さな子と関わるのもいつの間にか苦手になっていて、どう接すればいいかわからない。人の赤ちゃんを可愛いなと思っても、触れるのは怖いし見るだけで満足してしまう。

 そんな調子だから、避妊しても妊娠する可能性はゼロじゃないと思うとなかなか勇気が出なくて先に進めなかった。元カレは避妊具をつけるのを嫌がる人で、拒否していたら愛想をつかされたし、私も彼には失望してしまった。

 だから、自分は誰とも付き合えないんじゃないかと思っていたのだ。……史悠さんと出会うまでは。

 この人になら抱かれてもいい、抱かれたいと自然に思えた。それは本能でだけじゃなく、彼が誠実な人だと信じているから、安心して身を委ねられるのだろう。

 整えられていた前髪が垂れ下がる、色気のある寝顔を見つめて呟く。

「あなたになら、全部あげます」

 私の身体も、心も。史悠さんとひとつになれたら、人生が変わるような気がするから。



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