ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 悶々とする俺に、元気なおばさま社員があけっぴろげに言う。

「跡取りだって必要だろうし。ますます頑張らないとね、社ちょ──」
「子作りはしない」

 うざったさから、思わずそっけない口調でそれだけ返してしまった。賑やかな彼女たちが、驚きを露わにして急に黙り込む。

 これからも跡取りだなんだと話題にされるのは御免だし、その気はないという体にしておいてもいいかもしれない。

 やや怒りを含ませて「セクハラになりますよ。お気をつけて」と忠告し、固まった彼女たちをよそに歩き出した。ドアへと向かう俺の後方で、再び話し出す声が聞こえてくる。

「子作りしないって……まさか仮面夫婦?」
「新婚の空気はまったくないしね」
「結婚しても鬼のままかぁ……!」

 反論したい気持ちはヤマヤマだが、それも面倒なので放っておくことにして会議室を出た。

 一緒についてきた波多野は、不思議そうな顔をして俺の隣に並ぶ。

「え、なんで子作りしないんですか?」
「まだふたりでいたいから」
「あっ、そーいう…………あまーい!」
「うるさい」

 この男は依都の話をする時、いつも同じリアクションなので慣れてしまった。

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