ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 お互いの家族と食事会をして跡取りの話になった時、彼女の表情が少し暗くなったような、なんとも言えない違和感を覚えた。

 あれは単に妊娠へのプレッシャーからくるものじゃないかと思っていたが、子どもを持つこと自体に拒否感があったせいなのだろう。

 もう少し俺が気にかけていれば、彼女も話しやすくなっていたかもしれない。……そう、結局は凛太朗くんのほうが信頼されているようで気に食わないのだ。

 ただの従兄なら、ここまで嫉妬はしなかっただろう。だが、俺には彼に下心があるように思えて仕方がない。依都に対して特別な感情を抱いているなら、早くそれを断ち切ってやりたくなる。

「総じてこのイライラの元凶はあの従兄なんだ。いまだに依都への未練がありそうだから……軽く焼きを入れとくか」

 冷ややかな目をしてそう言うと、波多野はぱちぱちと瞬きした後、こちらに身を乗り出してくる。

「カチコミにでも行くんですか!?」
「アホか。〝たるんだ精神を引きしめる〟って意味だ」

 だから組の人間じゃねぇんだよ、と目が据わる。だが、くだらないやり取りで気が抜けて、やっと俺の口元が緩んだ。

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