ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「……お母さん、私が生まれた時のこと覚えてる?」

 カメラマンが皆に指示するのを眺めながら問いかけた。彼女は一瞬キョトンとした後、懐かしそうな目をして微笑む。

「もちろん。陣痛が来たのは初雪が舞うくらい寒い日の朝方でね、まだ寝てた依都のお父さんを叩き起こして病院に連れてってもらったわ」

 生まれた時間や体重、父の喜ぶ姿や私の様子など、細かいこともしっかり覚えていて、それくらい印象的だったのだとわかる。

「あんなに死ぬほど痛くて、最高に幸せな瞬間を忘れるわけがない」

 そう言い切る母の表情は、母性に溢れて輝いていた。私は愛されて生まれてきたんだと改めて実感して、心が満たされていく。

「じゃあ、これから頼らせてもらうね」

 私のひと言の意味がわからなかったのだろう。母は不思議そうな顔をしたものの、「撮りますよー」と声がかかったので前を向いた。

 数枚写真を撮った後、白無垢の上からお腹に手を当てた。その上に史悠さんが手を重ね、心配そうにこっそり尋ねる。

「体調、大丈夫か?」
「大丈夫。幸せだねって、心の中で伝えてたところ」

 温かい気持ちでそう言うと、彼もほっとした様子で頬を緩め、お腹を見下ろした。

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