婚約者と親友に裏切られて殺された聖女はアンデッドとして蘇ります!〜冥王様と共に絶望をお届けする予定ですけど……覚悟はいいですか?〜
「また幼い頃のように病になってしまったら……っ!だが鍵さえこちらにあれば絶対に大丈夫だ。鍵さえあれば……呪いが解けることはない」

父は部屋を歩きながら、ブツブツと何か意味の分からないことを言っている。
しかし一つだけわかることがあった。
それはヴィヴィアンの指に絡め取られた金色の鍵のことだ。

幼い頃から父に何度も何度も言われていた。
『ジェラール、この鍵だけは何があっても手放してはならない。絶対だ』
この鍵が結局なんなのかはわからない。
わからないけれど、父の必死な様子にジェラールは頷くしかなかった。

成長してこの鍵は何なのか問いかけると『この鍵を無くした時、国が滅びると思え』そう言われてジェラールはゾッとした。

だからこそジェラールは父に鍵を無くしたことを言えなかった。
このことが父に伝わればどうなるのか。

(だが、あの鍵はヴィヴィアンと共に死の森に沈んだんだ。永遠に無くなったのと同じだろう?)

幸い、今はジェラールがまだ鍵を持っていると思っているのだろう。

(この件が落ち着いたら話せばいいさ!)

それに何故かはわからないがアンデッドはヴィヴィアンがいなくなったのと同時にグログラーム王国に現れなくなる。
最後にヴィヴィアンが役に立ったのかもしれない。
そう思って嘲笑っていたジェラールだったが、ふとした瞬間にヴィヴィアンの優しい笑みが浮かぶ。
そして、まるで呪いのようにジェラールを蝕んでいくのだ。
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