墜愛

過去の話




綾人とは、幼馴染。



今通っている大学も同じ学部で、



ゼミまで一緒。



過ごす時間は他の誰よりも長い。



だからこそ、

自分は綾人に一番近い存在なんだと思えているのに、

不安になる。



それはきっと、

好意が伝わっているはずなのに、

なぜだか、

のらりくらり(かわ)されているような気がするからだ。



大学では、私たちはお互いに、塩対応。



「幼馴染なんだから、仲良くしろよー。」

なんて

言われることもよくあるくらいに、

私たちは皆の前では言い合いばかりだ。



だからこうして、一人暮らしの

私の部屋や、

綾人の部屋で、

頻繁に会って体を重ねていることなんて、

誰も気づいていない。



むしろ、

綾人は色んな女子に手を出す、

女泣かせな罪深いイケメンとして、

友達の間でも名が通っていて。



そして、そんな綾人を

私が毛嫌いしている、

ということも、よく知られている。



でも実際は、

こんなにも綾人のことが好きで。

目が離せなくて。

放っておけないんだ。

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