Crazy for you


「はあ」
私は重いため息をついて、スマホを見ながらベットに寝転がっていた。

孝ちゃんと付き合って1ヶ月が過ぎた。
何度か夜ご飯にいったりしてるのだけど、進展が一切無い。 
会っておしゃべりして家まで送ってくれてバイバイ。これじゃあ付き合う前と一緒だ。

休みの日はこないだの初デート以来会えてない。
1ヶ月の記念日だって、ご飯を食べただけだし。
手すら繋げていない。世の中のカップルってそんなもんなのかな?

ネットで検索してもよくわからなかったし……。

「孝ちゃん、好きとか言ってくれないなあ」
会ってる時はいつもと変わらない、気遣いができて優しい孝ちゃんだけど、態度が変わらなさすぎて私のことほんとに好きなのかなって思ってしまう。

私のこと好き?なんて、めんどくさい女に思われるのも嫌で聞けずにいる。
それにもし黙られたりなんかしたらショックだし、別れようって言われたらつらすぎる。

今日も日曜だけど孝ちゃんは用事があるって言われて会えず。
次のデートはいつかなあ。


一人でいると落ち込んできそうだったので、散歩に出ることにした。

駅近くのショップでセールをしていたので、コスメやアクセサリーを何となく見ていた。

あ、このイヤリングかわいいなー。
ゴールドのワッカってもってないんだよなー。

鏡でイヤリングを合わせてみると、いい感じに見えた。

買おっかな……。

そう思いながらふと駅の改札をみると、見慣れた人影が目に入って、思考が止まった。

え?
孝ちゃん……?

この間も着ていたベージュのシャツとカーゴパンツを履いている孝ちゃんが駅にいた。
しかも、この間ショッピングモールで出会った女の人の一人と。

サークルの集まり、とか……?

でもそれらしき人達は周りにいなかった。
心臓が嫌な音をたてて、ズキズキと痛み出す。

二人で、会ってる……?
なんで?

きっとなにか理由があると思うのに、思考は勝手に最悪を想像していく。
変わらない距離、手すら繋がれない、それって私に魅力がなくて。孝ちゃんは彼女にしてくれたけど、後悔してたりするのかな。
本当は私なんかより大人っぽい化粧も似合う女の人が好きだったりする?
そんな考えがぐるぐる回って泣きそうになってしまう。

孝ちゃんはそんな人じゃないってわかってるのに、それでも妄想は止まらない。

< 7 / 16 >

この作品をシェア

pagetop