スカートを穿いた猫
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翌朝の土曜日、玄関のチャイムの音で目が覚めた。

「ん〜……、もう昼じゃん」

スマホを確認して午前中を無駄にしてしまったことに後悔する。


喉の渇きを感じてベッドを降りると、ちょうど誰かが階段を上がる音が聞こえた。

この音はきっとお兄ちゃんだ。

今日は家にいるんだな、なんて呑気に考えながら部屋のドアを開ける、と。


「…………え、」


目の前にいたのは、月太である。

それも、赤のニットに黒のスカートを履いた────。


幻覚を見たのかと思い目を擦る。

「……」

「……」

いや、月太だ。

セミロングのウィッグをつけているけれど、紛れもなく月太だ。


綺麗な二重とくりっとした目元、真一文字の唇。

(月太だ……)

お互いフリーズしたまま、混乱した私はそっと部屋のドアを閉めた。


しかし、次の瞬間ものすごい勢いでドアが開く。

「いがら……」

「ちょ!待って!考えてるから!」

慌ててドアを押さえるも月太が開けようとするから、二人で力比べのような図になってしまった。

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