スカートを穿いた猫

毛穴のない白い肌にぱっちりとした目元、通った鼻筋に綺麗な色の唇。

(これメイクしたらかなり化けるんじゃ……)

メイク好きとしては手がウズウズしてしまう。

改めて月太に向き直り口を開いた。

「正直なこと言っていい?」


私が真顔で言うと、月太は不意に目を伏せる。

「……いいよ」

無機質に落ちた声に、そりゃ嫌だよねと思いながら堪えきれない欲望が顔を出す。


「……メイクしていい?」

「え?」


月太が驚いた表情で顔を上げた。

ぱっちりとした目をまん丸に開き、唇がぽかんと空いている。

「メイクしがいのありそうな顔だな、と思いまして……」

余計なことを言ってしまったと思うももう遅い。苦笑いで言葉を重ねたものの、月太は何も答えない。


さすがに唐突過ぎたかもしれない。

そもそも兄に言われた通りメイクしようとするなんて月太も思ってもみなかっただろう。

「……ご、ごめん!」

パンッと顔の前で手を合わせると、月太の肩がビクッと揺れた。


空気の読めない私を叱るのかそれとも月曜日から友達が1人減るのか……。

考えるほどに次第に私の方が暗くなってくる。


しかし、次に零れたのは月太が吐息のような笑い声だった。

顔を上げるとその顔はすでに真顔に戻っていたけれど、幾分か空気は柔らかくなった気がする。

「五十嵐」

月太の声がようやく普段と似たトーンになる。

「いいよ、メイクして」

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