スカートを穿いた猫

「どう?変身完了?」

ちょうど良いところに兄がひょっこりと顔を出す。

月太を見てきょとんとした兄は次の瞬間零れるように言った。


「…………え、可愛い」


「でしょ!?」

私と同じ反応をした兄に前のめりで同意する。

「色っぽ美少女風にしてみたんだけど!」

「すごいよ多美!げっちゃんに似合いすぎ!」

「……」

鼻息荒く興奮する五十嵐兄妹に月太は若干引き気味だ。


なおも、こんなメイクがしてみたい、あれも似合うかも、と考え始めた私を置いて、兄は月太の横に座るとそっと笑いかけた。


「多美なら大丈夫って言ったでしょ」


さっきまで憎まれ口を叩いていた月太が大人しく頷くのを見て、私も静かに座る。

兄は私をちらりと見ると、再び月太に向かい言葉を重ねた。


「秘密を一緒に守ってくれる人がいるってちょっと心が軽くなるよ」


テレビや動画なんかでよく見かけるようになった男の娘だけど、現実ではまだまだ理解されにくくて兄も月太もつらいものを抱えているのかもしれない。

だけど、それでも好きなことをしている兄が私は結構好きだから。


「月太の秘密、一緒に守らせて」

月太にとって心を軽くするような存在になれたらいいなって、ちょっと思ってしまった。


「……ん」

素直に頷いた月太に慣れないむず痒さを感じる。

結局その後はいつもの口調に戻ってしまったけれど、月太が少し心を開いてくれた気がして、私は張り切ってあれこれとコスメを勧めるのだった。

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