アンハッピー・ウエディング〜後編〜
人様が丹精込めて作った弁当を、自分は食べないから他の人に渡せ、なんて。

そんな失礼極まりないことを言う男、こっちから願い下げだ。

と、言いたいところだったが。

ここで引き下がって諦めたら、それはそれで負けたような気になる。

そう思って、その後もヤンキー風イケメンの攻略を続け。

ときメロを始めて、一週間が経った頃。

「…終わったな…」

「終わったねー」

俺達は、ときメロ一周目のエンディングを、しみじみと眺めていた。

結局、あれからどうなったのか、って?

結論から言うと、攻略には成功した。

最後の卒業式のシーンで、無事にヤンキーイケメンに告白されたよ。

『お前のこと、一生幸せにする』って。超真面目な顔して、ちょっとクサい台詞を言われた。

こっちがむず痒くなってくるっての。

あれだけ好感度下がりまくってたのに、よく攻略出来たな、と思っただろ?

あのヤンキーを攻略出来たのは、ひとえに寿々花さんのお陰だよ。

どうやら俺の考えは、全部裏目に出るみたいだから。

俺は自分の意見を引っ込めて、寿々花さんの意見を優先して選択肢を選んだ。

寿々花さんが選ぶ選択肢は、どれも面白いくらいにドンピシャだった。

好感度急上昇で、あっという間に仲良くなった。

後半になってくると、こちらから誘わなくても、向こうからデートに誘ってくる始末。

初日の苦戦は何だったのか。

何もかも、寿々花さんの予想通りだったよ。

このヤンキーイケメン、イカつい面をしてる癖に、動物が好きだったみたいで。

動物園に誘うと、そりゃもう楽しそうにはしゃいでいらっしゃった。

意味分かんねぇよ。

俺の考えは、何もかも裏目に出てたんだなぁって。

寿々花さんがいなかったら、絶対攻略出来なかっただろう。

「寿々花さん…。あんた乙女ゲーのプロだな…」

「えへへ。ありがとー」

スマシスもプロ、ときメロもプロ…。

向かうところ敵なしじゃないか。

…って言うか、俺が壊滅的にゲーム下手くそなだけかもしれない。
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