アンハッピー・ウエディング〜後編〜
秋立つ頃の章3
…雛堂からゲーム機をもらって、一ヶ月ほど経過した頃。




「最近どうですか、悠理さん。お宅のお嬢さんは」

と、乙無が聞いてきた。

寿々花さんのことか?

「元気だよ。いつも通り…」

「そうですか。それは何より…。人間が平穏で安楽な生活を送れるのは、ひとえに邪神たるイングレア様の加護があっての、」

「格闘ゲームやったり乙女ゲームやってたりしたけど、最近はまた別のゲームをやっててさ」

「…邪神の眷属である僕の言葉をスルーするなんて、全くこれだから人間は…」

「最近は、レースゲームに夢中だよ」

ロミオカートって知ってるか?

バナナの皮や赤や緑の甲羅を投げたり、キノコで加速したり。

爆弾まで投げつけてくるんだぜ。危険運転だろ。

俺も一緒にやらせてもらったけど、周回遅れどころか、真っ直ぐ進むことさえ覚束なかった。

もしかしたら俺は、壊滅的にゲームが下手くそなのかもしれない。

いや、前から気づいてたけど。一生懸命気づかない振りをしていた。自分のプライドの為に。

でも、さすがの俺もそろそろ、認めない訳にはいかない。

俺はゲームが下手くそです。はい。

畜生。

対する寿々花さんが、俺とは逆にめちゃくちゃゲーム上手いからさ。

余計、俺の下手くそさが際立つ。

昨日も、「レート7万超えちゃったー」とか言ってた。

よく分かんないけど、それって凄いことなんだろ?多分。

格好良くドリフトを決めて、キノコで華麗にショートカットを決める寿々花さんの横で。

真っ直ぐ進むどころか、逆走と暴走を繰り返し、何度もコースから落っこちては救出されるを繰り返している俺とは、まるで別次元だよ。

…畜生。
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