アンハッピー・ウエディング〜後編〜
寿々花さんって、意外とゲーム得意だったんだなぁ。

そして俺って、自分で思ってる以上にゲーム下手だったんだなぁって。

今回の件で、そのことがよーく分かった。

この調子で他のゲームも買って、寿々花さんにはゲーマーになってもらうのも悪くないかもしれない。

そうしたら、俺がおままごとに付き合う必要がなくなるだろ?

…その代わりゲームに付き合わされてるから、結局一緒なんだけど。

…ところで。

さっきから、一つ気になっていることがある。

「…なぁ、乙無。聞いても良いか?」

「勿論ですよ。とうとうあなたも、邪神イングレア様の教えに、」

「入信するつもりはねぇ。そうじゃなくて…雛堂のことだよ」

この場にいるもう一人の男の話だ。

さっきからずっと黙って、白目を剥いている男。

そう、俺と寿々花さんにゲームをプレゼントしてくれた張本人だ。

「さっきからあいつ、何やってんの?」

「さぁ…。今日は大人しいですね」

「あぁ」

大人し過ぎて不気味。

いつもは率先してべらべら喋ってるもんな。

普段うるさい奴が静かだと、逆に心配になるよな。

腹でも痛いのかなって。

白目剥いてるから、余計に。

「熱中症か何か…?それとも、この間の俺みたいに風邪でも引いたのか」

「馬鹿は風邪引かないって言いますし、風邪ではないのでは?」

「確かに。じゃあ風邪ではないな…。…大丈夫か?」

という会話を、本人の目の前でしているというのに。

雛堂からのツッコミは、一切ナシ。

…マジでどうしたんだ?

「これ、今…いきなり『わっ!』って驚かせたらどうなると思う?」

「それで気絶でもされたら、悠理さんの責任になりますよ」

「そうか…。じゃあやめとくよ」

なら、驚かせる代わりに。

「…おい、雛堂。大丈夫か?」

肩を揺すって呼びかけてみた。

雛堂は白目を剥いたまま、無言。

…魂抜けてんのか?

「幽体離脱した雛堂とかじゃないよな…?」

「さぁ…。本体だと思いますけど」

「乙無、あんたなんかしたのか?例の邪神の生贄に雛堂の魂を捧げたとか…」

「失礼な。我らが主は罪の器を求めているんです。罪なき人間の生き血など、イングレア様に捧げる価値はありません」

あ、そう…。そりゃ失礼。

…じゃあ、さっきから魂の抜けた、この雛堂は何なんだ?

「雛堂が魂抜けてる理由…。小テストで0点取ったから、とか?」

「小テストで0点くらい、大也さんにとっては日常茶飯事じゃないですか」

「そういえば、そうだな…」

そのくらいで魂抜けてるんじゃ、毎週放心してなきゃいけない。

…分かんねぇな。

「じゃ、放っとくか」

「そうですね」

聞いても返事しないし、多分聞いたところで大したことじゃないし。

もう放っとこうぜ。明日になったら治ってるだろ。

と、思ったら。

「…おめーら、この薄情者共め」

…あ、口利いた。
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