アンハッピー・ウエディング〜後編〜
秋立つ頃の章5〜後編〜
逃げられんか…そうだよなぁ。

午前中だけで、もう怒涛の展開続きで忘れかけていたけど。

午後から…「メインイベント」が待ってるんだよなぁ…。

…はー。気が重い。

良いじゃん、もう。今日は俺、もう既に色んなこと頑張ったよ。

カレー屋の店主やってさ。チャラ男から寿々花さんを庇ったり。

もう充分だろ。帰らせてくれよ。

…だが、そうはいかない。

これでも一応、クラスの代表として…実質生け贄だが…選ばれた訳であって。

例え押し付けられたものであっても、その役目を放棄して勝手に帰る訳にはいかなかった。

衣装だって、貸してもらったんだし?

折角貸してもらった衣装に、袖を通すことなく突っ返す訳にもいかず。

結局、外堀埋められてんだよなぁ…。 

「気が乗らねぇよ…。激しく気が乗らねぇ…」

「まぁまぁ、元気出せ悠理兄さん。ほら、賄いにカレーの余り食べさせてやるから」

「それ、俺が作った奴だけどな…」

材料ほぼ残ってないから、ただのニンジンカレーだよ。

「あと、さっき買ってきた真珠兄さんへのお土産も、一緒に食べようぜ」

雛堂は、さっき新校舎で買ってきたスイーツをテーブルに広げた。

ベビーカステラとか、もうすっかり冷めきってしまっているが。

今の俺達は、疲れた身体に糖分補給が必要である。

…無事にカレー完売して、喜んで良いはずなのに。

全然、そんな気になれない。

午後の「メインイベント」のことを思うと、非常に気が重かった。
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