アンハッピー・ウエディング〜後編〜
息白む頃の章2
…そして、迎えた年明け。

新しい一年の始まりである。


 



…しかし、その日の俺の夢見は最悪だった。

大量の雪だるまに襲われて、ぺちゃんこに潰されている夢だったよ。

昼間に雪かきしたせいだな。そうに違いない。

巨大雪だるまの下敷きになってジタバタしていたところを、寿々花さんがやって来て。

雪だるまをひょいっと退かしてくれて、半泣きで下敷きになってる俺を助けてくれた。

そんな夢だった。

これ、今年の初夢?

先行きが不安過ぎて、晴れやかな気持ちで信念を迎えることが出来ません。

大丈夫、これじゃない。今日だよ。

今日の夜、1月1日の夜に見る夢が初夢だから。うん。そういうことにしよう。

今夜はきっと、富士山の上で鷹を眺めながら焼き茄子食べてる夢を見るから。

最高の初夢だな。

憂鬱な気分を晴らすように、せめて少しでも正月っぽいことをしようと。

その日は朝から、お雑煮を作ってみた。

つい実家の味で作ってしまったけど、お雑煮って地域によって、家庭によってかなり味や具に差があるんだよな。

うちは醤油ベースの味付けで、丸餅と、それから何種類かの野菜を入れて作る。

幼い時からこのお雑煮を食べてたから、これが全国共通だと思っていたが。

味噌味のお雑煮だったり、あんこを入れたり、魚介類や、その地域の特産物を入れたり。

お雑煮に入れるお餅一つを取っても、丸餅か角餅か、煮るか焼くか、で多種多少な派閥があるらしいな。

従って、その辺りの意見のすり合わせをしておかないと。

新婚夫婦は、新年早々お雑煮が原因でくだらない喧嘩をする恐れがある。

まぁ、誰でも生まれ育った家庭の味が一番って思うものだからな。

その点、譲り合いの精神が大切である。

で、うちはどうなの、って話だが。

「悠理く〜ん…。おはよー…」

眠い目を擦りながら、我が家のお嬢様が起きてきた。

髪の毛ぼっさぼさ。ちょっとは梳かしてこいよ…と言いたいところだが。

そもそも着替えてから来い、と口を酸っぱくして何回も言ってるのに、未だに俺のジャージ姿でうろうろしているこの人に。

髪の毛を梳かしてきなさい、と言って、素直に言うことを聞くと思うか?

そういう訳で、俺はもういちいちとやかく言わない。

「おはよう。寿々花さん。あけましておめでとう」

「うーん…。あけまして…。…あれ?明けたの?」

「…明けたよ…」

今気づいたのか?

さては、まだ寝惚けてんな。

「今、来年なの?もう今年終わった?」

「あぁ。年明けたよ。もう来年だ」

「わーい。一年の終わりに最後におしゃべりした人が悠理君で、一年の初めに最初におしゃべりしたのも悠理君なんだね。何だかとっても嬉しいねー」

お、おぉ…。

そういう考え方をしたことはなかったな。

でも、家族ってそういうもんだろ?
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