アンハッピー・ウエディング〜後編〜
息白む頃の章5
…改めて、改めて考えてみる。

キノコについて。

…唐突に、日常生活で、インタビューみたいに。

キノコについて知っていることを挙げよ、と言われたら、なんて答える?

…やべぇ。俺、「食べたら美味しいです」くらいしか言えないと思う。

シイタケ…美味いよな。

…って、それじゃあレポートにはならないんだってば。

キノコの美味しさについてレポート20枚も語ってたら、それはもう生物の研究レポートじゃない。

ただの食レポじゃん。

他に…キノコについて知ってること…。

「…寿々花さん、キノコについて何か知ってる?」

「私、キノコ嫌い」

「…そうだった…」

身も蓋もない。

キノコ嫌いな人に、キノコについて知ってることを尋ねた俺が馬鹿だった。

つーか、キノコ嫌いだって言ってるのに、これを研究テーマにして良いのか?

またテーマを変えるか…?

いや、無駄だな。

今更またテーマを変えても、今と同じことをループするだけ。

結局知らないことだらけなんだから、レポートにするには、それなりに調べなきゃならない。

問題は、研究テーマをどうするかではなく。

如何にして、その研究テーマを調べるかだ。

…って、何で俺が他人の課題を、こんなに真剣に考えてるんだ?

既に寿々花さんの課題じゃなくて、俺の課題と化してる。

あぁ、もう気にするな。そんなことは。

「調べ物と言えば…やっぱり…図書館に行くしかないよな」

新校舎の、あの大きな図書館に行けば。

キノコについての本、なんてのも置いてあるんじゃね?多分。

そこで、ありったけキノコに関する資料を調べて…。

「でも、図書館で本を探して、読んでる暇があるかな?」

「あ、そうか…」

普通の調べ物ならそれで良いけど、今回は時間がないからな。

悠長に文献を探して、ましてやそれを熟読している時間はない。

一冊二冊なら、手分けすれば読めるかもしれないが。

それ以上になると、とても手に負えない。時間がない。

もっと手っ取り早い手段が必要だ。

え?急がば回れだろうがって?

急いで遠回りしても、ゆっくり真っ直ぐ走っても、時間外にゴール出来なかったら意味ないんだよ。

だったら、せめて出来るだけ急いだ方が良いだろ。

「こんな時の為に、文明の利器…ネットで調べる、という方法を取りたいところだが…」

「ねっと?」

「パソコンで調べるんだよ」

最終奥義、ウィキ●ディア丸写し。

でも、これは諸刃の剣である。

提出期限には間に合うと思うけど、後でバレた時に、それ以上に恐ろしいことになる。

よって、この方法は排除だな…。

他に、何か良い方法がないだろうか。

すると、寿々花さんが。

「ねぇねぇ、悠理君。本で調べるより、実際に目で見た方が早いんじゃないかな?」

と、提案した。

…実際に、目で見る?本で調べるんじゃなくて?
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