再会溺愛〜夢の一夜の証と共に〜
 どれくらいボーッとしていたのだろう。

「おい」と突然頭上から声が掛かり驚いた。

「へ?!」
「さっきからずっとここにいるがどうした?体調が悪いのか?」

 バリトンボイスに視線を向けると、少し冷たそうに見えるイケメンがこちらを見下ろしていた。

「……」
「大丈夫か?」
「えっ、あっ、はい」

 イケメンに気を取られて返事すら忘れてしまっていた。佑樹もイケメンだと思うが、レベルが違う。

「長時間ここにいるが、何か困ったことがあるのか?」

 私がここにずっといるとなぜ知っているのだろうか。困っているのは、今すぐにでも佑樹への思いを消し去りたいことだろうか。それを目の前の彼に言ったところで解決はしないだろう。いや、知らない相手に吐き出したら綺麗サッパリ忘れられたりはしないだろうか。

「私のひとり言を聞いてくれますか?」
「ああ。吐き出して楽になるなら、全部吐き出せ」

 今日の私は、見ず知らずの人に頼りたいほど弱っていたようだ。

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