天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜

16話 輝くほどの美しさ

 ルシアンはいつもよりご機嫌の様子で笑みを浮かべ、午前中の執務室では王太子補佐のカッシュと事務処理を進めていた。

 アマリリスが不穏分子を排除してくれたおかげで面会が激減し、午後の腹黒教育が終わればルシアンとアマリリスはそのまま終業となる。

 あまりに機嫌がよすぎて幸せオーラを放ちすぎたのか、カッシュが呆れ顔で口を開いた。

「ルシアン、顔が緩みっぱなしだぞ」
「いや……リリスと一緒にいられるのが嬉しすぎて、これ以上キリッとするのは無理だよ」 
「はあ、もう十年も片思いを拗らせてたからな……無理もないか」

 カッシュは苦笑いを浮かべる。王都の西に領地を持つアンデルス公爵家の嫡男カッシュは、ルシアンの幼馴染であり数少ない友人だ。ふたりで執務をこなす時は、いつも気楽な言葉使いになる。

 ルシアンはようやくチャンスを掴み、人生で初めて欲しいと思った女性を婚約者にした。十年間もの間ひっそりと積み重ねた想いは簡単に昇華するわけもなく、ルシアンの腹の底で黒くドロドロとした執着となっている。

(リリスを手にするため父上も巻き込んで囲い込んだから嫌われているかと思ったけど、予想以上にクールで聡明だから助かったな。これなら僕がリリスの心を掴むのも早まりそうだ……)

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