アラフィフ・ララバイ
今観客席で観ている方たちには申し訳ないと思いながらも、背に腹は変えられない。

既に開幕している扉の向こうへ案内されるがまま、母と二人足を踏み入れた。

幸いプロローグ的な演目が幕を下ろしたところで入るには丁度いいタイミング。

その後はなんとかストーリーについていくこともでき、その世界に浸りきることができた。

母は、

安堵したのか、私の横で何度か船を漕いでいたけれど。

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「よかったじゃない。お母さんもなんともなくてなによりよ」

詩織さんはちょっと困ったような表情で笑った。

「ほんと、焦りましたよ。でも、冴木さんがいてくれてほんとに助かったっていうか」

「イケメンだったし、ね?」

「何言ってるんですか~。おばちゃんの分際でイケメンだのなんだので浮かれるなんて身の程知らずもいいとこでしょ」

「そんなおばちゃんなんて卑下することないじゃない。私なんかあなたよりずっと年上だけど、今でも若くてきれいな男性目の前にしたら浮き足だつわよ」

「ほんとですか?いつも詩織さんクールだから、そういう俗っぽい観念は持ってないのかと思ってましたよ」

詩織さんは前髪を掻き上げ、不適な笑みを浮かべる。

「女はいくつになっても女。いや、そうでなくちゃいけないと私は思ってるの」

彼女が言うと納得できるから不思議だ。

詩織さんは六十だっていうのに、ほんときれい。

髪も明るいカラーを入れて艶々してるし、肌も私なんかよりずっときめ細かくて化粧のノリもいい。

スポーツジムにも通ってるから、スレンダーでスタイルも抜群だ。
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