アラフィフ・ララバイ
「何って、そんなの内田ちゃんの心に聞きなさい。やってみたいこと、一つもない?」

私の心に聞いてみる。

うーん。結局一つしか思い浮かばない。漠然としているけれど。

「……無理だと思いますけど、やっぱり大好きな演劇に関わるようなことがしたい、かな」

「そっか。じゃ、いっそのこと劇場で働いちゃえば?」

「働くって、今ここでやってる仕事やめて?」

やめるのはとてもとてもリスキーだ。

ここのパート代も大切な我が家の蓄えになってるわけだし。

「やめないわよ。いわゆるダブルワーク」

「ダブルワーク?!」

「そんなに珍しくはないのよ。私の周りでも結構いるんだから、パートやアルバイトのかけもち」

「だって、ここは平日週二~三日働いてるからそれ以上になったら体がもちませんよ。もう五十だし」

「それそれ!」

すかざず詩織さんが突っ込む。

「その五十だしっていうのが内田ちゃんの可能性を狭めてるわけ。やってみなきゃわかんないでしょう?」

「やってみる?」

「そ。なるべく自分の条件に合う仕事をリサーチして、それに合致すればとりあえず飛び込んでみるべき。そこから全てが始まるわ」

そりゃそうなんだけど。

胸の奥がドキドキ震えていた。

何かが始まる予感みたいな?気のせいか?

「まずは調べてみたら?条件に合わなければ今はあきらめろってことだし。それに、必ずしも採用になるかどうかはわからないわよ。そこは覚悟しておいた方がいい」

確かに。

五十のおばちゃんを劇場で受け入れてくれるなんて、普通に考えたら難しいよね。

「ちょっと探してみよっかな」

「ええ、そうしてみなさい。一歩踏み出したら、例えそれがどう転んだとしても、きっと何かが始まるから」

詩織さんの目がキラキラしてる。

まるで自分のことみたいいにワクワクしているような目だった。
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