アラフィフ・ララバイ
何一つ気の効いた言葉が出てこない私に詩織さんは笑いながら私の肩を軽く叩く。きっと私を気遣って。

「私は全然大丈夫だから。むしろ今の方がずっと元気」

「え、そうなんですか?」

「娘ももう三十で自立してるし、私の離婚も大いに結構!だなんて後押ししてくれたくらい」

娘さんが一人いるのは知ってたけれど、もうそんな大きいんだ。いや、大きいっていうか立派な大人だ。

離婚って、きっと余程の理由があるんだろう。

年金だって結婚していればしっかりもらえるはずなのに、六十で離婚なんて。私だって旦那のことは、今や空気以下の存在だけど、離婚はここまで我慢したのに逆にもったいないなんて思っちゃう。

「内田ちゃんは五十だよね?」

「あ、はい」

「五十は人生のターニングポイント。やれること、やりたいことあればどんどん挑戦した方がいいわ。私ももう少し早くいろんなこと始めればよかったって後悔してるの」

やれること。

やりたいこと。

「人生は最終的には自分のもの。自分でしっかり決めて進まなくちゃね」

……なるほど、そうか。

今のまま年をとるもよし、何か今とは違う生き方を経験するもよし、なんだ。

五十だからって尻ごみする必要なんて一つもない。

ただ、若い頃より若干やりたいことが狭まるだけ。

って、詩織さん見てたらそんなこともないか。

「そうは言っても、どうなんでしょ。私に何かできるんでしょうか」

素朴に思ったことが口をついて出てきた。
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