バー・アンバー 第一巻
✕✕OL殺人事件

(ここでちょっと…)

(ここでちょっとこの小説の始りの舞台としている渋谷・宇田川町について一言言及します。宇田川というのは渋谷川の支流で東京オリンピックの工事を契機として地中に暗渠化されたそうです。元は両岸の狭まった小石や砂まじりの長閑な川で周囲の田畑を潤していたとか。文部省唱歌となった高野辰之作詩『春の小川』はこの川のことです。時移り今は昔の面影などどこにもない日本一の繁華街と化してしまいましたが、しかし暗渠化されたとは云え宇田川の流れは今でも地下を細々と流れている分けです。当小説の主人公のミキは某大企業の元OLだったという設定です。また某有名私立大学出身という設定もしており、それであるならばミキの往時はまさに春の小川のごとき、自適で朗々とした人生を送っていたことでしょう。それがある日ある時その自分のすべてを否定されるような厄事にミキは見舞われてしまいます。その心の痛手を払拭する為に彼女はどんどんと身を持ち崩して行き、ついにはここで云う〝暗渠化された存在”と化してしまいます。しかし彼女の心の水脈は今でも地下のどこかを流れていていつか渋谷川へと、そして大海へと、合一、合流したいものと願い、その方途を探っているのだと思います…。いや、先走って小説の筋らしきことを漏らしてしまいました。これでは興味が削がれます。ではどうぞ小説へとお戻りください)
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