バー・アンバー 第一巻
桃畑

第六章の説明

この第六章タイトル・桃畑の所以はわたしが中国小説家の廢名(本名・馮文炳1901〜1967)による小説「桃畑」に痛く入れ込んでいるがゆえです。同小説は「小説詩」とも命名すべき、あえて云えば小説にあるべきTPOをすべて無視したような、なんとも幽玄さと感傷に充ちた、全編これ詩のような作風を持つ珠玉の作品であるからです。これを読めば主人公の少女の何とも痛ましい、それでいながら桃に託した愛すべき感性がびんびんと伝わってまいります。現実は少女の父が収穫した桃の実をすべて酒代に変えてしまうような超貧しく、悲惨なものなのですが、しかしそれゆえにこそ少女の幼気な純粋さが読者にストレートに伝わって来るのです。ぜひ一読をお勧めする次第ですが、その名作には及ぶべくもない当拙小説「バー・アンバー」にもその〝小説詩〟の手法を取り入れたく、これよりの第六章を書き進めていく所存です。夢か現か、田村淳二が桃畑の世界におりてまいります…。
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