妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
 すると、俺の質問に笑顔を浮かべたままの有紗は、こう答えた。

「何で? 理由とか聞かれても正直困るんだけど……」と。

「それじゃあアンタは、理由も無く亜夢を嫌ってるっていうのか? そんな訳ないだろ? 嫌いになるには、何かしら原因があるだろ、普通」
「そうかしら、人間誰だって合わないと感じる人はいるでしょ? 家族だろうが姉妹だろうが、所詮は他人じゃない。合わない事だってあると思うけど?」
「百歩譲って……合わないと感じるのも、嫌いだと思うのも仕方ないにしても、いつまでも固執して不幸になる事を望んだり、大切な物を何でも奪ったり……そこまでする必要があるのかよ?」
「逆に聞くけど、嫌いな相手に幸せになってもらいたい人なんているの? 自分より幸せだったら、普通嫌でしょ?」
「だからって、何でもかんでも奪っていい訳じゃないだろ? 嫌いな相手が不幸になればそれでいいのか? それなら自分の方が幸せになれるよう努力すればいいだろうが」
「はぁ……分かってないなぁ百瀬くんは。私はね、大嫌いなお姉ちゃんが絶望している顔を見る事が一番の幸せだし、心が満たされるの。私は自分の幸せの為に、お姉ちゃんから全てを奪うの」
「何なんだよ、それ……」
「だから、何でもかんでも上手くいって幸せそうな顔してるお姉ちゃんが一番嫌い。特に今、貴方と一緒に居るお姉ちゃんが最高にムカつくし、大っ嫌い!」

 笑顔から一転、怒りに満ちた表情を浮かべた有紗は睨み付けるように俺を見てくると、

「貴方たちが別れない限り、私は一生付き纏う。二人にだけは、上手くいって欲しくないから」

 俺と亜夢にだけは、一緒になって欲しく無いと言い放った。

 正直、分からない。

 何が彼女をそうまでさせるのか。

 そしてそれと同時に、

 大した理由も無く嫌いだと言いながら、ここまでの執着を見せる事に恐怖さえ感じていた。

(駄目だ、有紗(コイツ)には、何を言っても無駄だ)

 話し合いで解決するとは思っていなかったけど、正直この結果は予想外だった。

 理由も無く嫌っているとなると、正直どうする事も出来ない。

 とにかく有紗は俺と亜夢が一緒になるのを酷く嫌っているらしい。

「……それじゃあ、俺が亜夢に関わらなければ、アンタはそれで満足なのか?」
「……そうね、百瀬くんに振られたらお姉ちゃんはこれまでの中で一番辛いだろうから、すっごく良い顔するだろうなぁ、この世の終わりみたいに落ち込んで、立ち直る事すら出来ないかもね。あぁ、見てみたいなぁ、そういう表情のお姉ちゃん」

 俺が離れれば満足なのかを問うと、有紗は嬉々として亜夢の絶望に満ちた表情を想像しては、可笑しそうに笑っていた。
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