妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
「本日はわざわざこのような場を設けて頂いてすみません。私事ではございますが、この度、私、荒木田 百瀬はこちらにおります道枝 亜夢さんと婚約した事を発表させて頂きます」

 百瀬くんが私との婚約を発表したので、紹介された私はペコリと頭を下げた。

「彼女は一般人ですが、これからも私がメディアへの顔出しを続けるにあたり、公表しないとありもしない噂が出回ったり、別の相手との仲を疑われたりする事もあるかと思い、そういう誤解を生まない為にも公表する運びとなりました」

 こうして百瀬くんが発表に至った経緯を話している中、私は思う。

 果たして今、この会見の様子を有紗は見ているのだろうかと。

 まあ、リアルタイムでなくてもネットニュースにもなるだろうから必ず目にはするだろうけど、これを見て、黙って受け入れてくれるのか不安がある。

(何も無ければいいんだけど……)

 百瀬くんたちは何かあっても守ってくれると言ってくれたけど何も無いに越した事はないし、こうなった以上、いい加減私の事は構わないで欲しい。

 十分程度で会見は終わり、私はひとまず安堵する。

「亜夢、会見中、何考えてたの?」
「え?」
「何だか途中から眉間に皺、寄ってたよ?」
「え? う、嘘……!?」
「嘘。まぁ、皺は寄って無かったけど、何だか不安そうな表情してた」
「……その、有紗は、この会見見たのかなって……」
「ああ、やっぱりね」

 会場から控え室へ戻った私は百瀬くんに指摘されて会見中に感じていた事を素直に答えると、百瀬くんは納得したように頷いた。

「実はね、亜夢には内緒にしてたんだけど、亜夢の家族の事は監視させてもらってるんだ」
「監視……?」
「悪いとは思ったけど、この会見を見た後でどんな行動を取るのか知っておかないと対処のしようがないからね。妹は今、実家に戻ってるみたいで会見の時間はお母さんと二人で自宅に居たみたいだから、恐らく二人で会見は観てるんじゃないかと思う」
「そう……なんだ」
「大丈夫、どんな事になっても心配いらないよ。ネットでの反応は結構良い感じだって報告を貰ったし、俺の婚約者は亜夢だって、世間には知れ渡ったんだ。今更妹が出来る事なんて何もないよ」
「……うん、そうだよね」

 大丈夫、心配無いと言われても、どうしても安心出来ないのは何故だろう。

 不安を胸に残しつつも、迎えの車が到着したと連絡を受けた私は百瀬くんと共に荒木田家へ向かう事になった。
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