妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
「……ごめん」
「……今は、ちょっと冷静になれそうにないから……帰るね」

 彼を悲しませてしまった罪悪感と、今更どうする事も出来ないもどかしさで頭の中がぐちゃぐちゃだった私はそれだけ言うと、無言で席を立ってそのまま部屋を出て行った。

 勿論、百瀬くんは追い掛けて来ない。

 それもそう。追い掛けても、今は私が話をしない事を知っているから。

 だけど、自分から彼を拒絶したくせに心のどこかで後悔してる自分もいて、何だかもう、どうすれば良かったのか分からなくなっていた。

 自分の部屋へ戻った私は簡単に衣服などの荷物を旅行鞄に詰めると、再び部屋を出る。

 百瀬くんとは隣同士で部屋に居ると外へ出た時に顔を合わせてしまうかもしれないし、きちんと気持ちの整理がつくまでは彼に会わない方がいいと思ったから、ひとまず今夜はホテルで過ごす事を決めたのだ。

 ホテルに着いて改めて一人になった私は、ベッドの上に寝転んで目を閉じる。

 すると思い浮かぶのは、百瀬くんと過ごした楽しい時間ばかり。

 彼は、あの時何を言おうとしたのだろう。

 嘘は、何の為についていたのだろう。

 やっぱりあそこできちんと話を聞くべきだったんじゃないか。

 落ち着いて考えてみると、自分の行動に後悔しかない。

 そんな時、スマホのバイブ音に気付いた私はのそのそと起き上がると、バッグからスマホを取り出した。

「…………」

 画面に表示されているのは百瀬くんの名前。

 自分から突き放したくせに声が聞きたくて電話に出てしまいたい衝動に駆られるけれど、グッと堪えて我慢する。

 そして暫くするとバイブは鳴り止み、その事にホッと胸を撫で下ろす。

 彼からの着信は既に数件あったし、メッセージも何通か送られて来ていたのを見ると、再び胸が締め付けられた。

「……百瀬くん……」

 メッセージを開くと、『ごめん』『話がしたい』『ずっと待ってる』という言葉ばかりが綴られている。

 私は多分、嘘をつかれた事よりも、有紗と付き合っていたという事実の方が受け入れられないんだと思う。

 彼曰く、好きで付き合った訳じゃなかったらしいけど、それでも、有紗の話から推測するに身体の関係はあった訳で、好きでも無い人と平気で寝れるんだと思うと、やっぱりすぐに彼を受け入れる気にはなれない。

 そう、頭では分かっているのに、拒絶してしまったあの時の百瀬くんの表情が、頭から離れずにいる。
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