世界を救わなくったって
生きていて、好きでもない人と結婚させられる可能性があるとは考えもしなかった。
こんなことになるんだったら、去年あたりにテイルに告白しておけばよかった。

……でもテイルの好きな人のタイプ、「器が広くて気遣いができる人」だからな。
俺は器が小さいし、気遣いもあまりできない。
テイルに近付くヤツがいたら、顔には出さないように気を付けるが、めちゃくちゃ腹立つ。
もし仮に、万が一、テイルが俺以外の人と付き合おうものなら___

……吐き気がしてきた。
考えるのをやめよう。


「顔色が悪いぞ。大丈夫か?」


ムンターさんが、俺に薬草を渡した。


「魔王討伐の旅に出ると言って、真っ先に魔王城に行こうとするからだ」

「魔王城に魔王がいるのに、なんで今まで魔王討伐に向かった旅人は、魔王城を目指さなかったんですか?」


薬草を千切り、口に入れる。
あいかわらず苦かった。


「今までの旅人たちも、目指してはいる。ただ、魔王城に行くには、魔族の張っている結界を解除しなきゃいけないんだ」


それなのに……と、ムンターさんは大きく息を吐く。


「フィアーバ、お前は結界を張っている魔族を倒さずに、結界の一部を壊して進んでいるんだ」


え、だって、そっちの方が早いだろ。
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