狼上司と秘密の関係
千明はゴクリとツバを飲み込んだ。
深い意味はないと言っても、部屋を取ってあるということは今日はここに一泊するということだ。

これで動揺しない方がおかしい。
千明は視線を泳がせて窓の外へやった。
「もちろん無理にとは言わないし、なにもするつもりはないんだ」

大和は早口に説明している。
恋人になるということは自然と体の関係になることも含まれている。
もちろん、そうじゃないカップルもいると思うけれど、少なくとも千明にはその覚悟があった。

けれど、まさかこんなに早く……。
「やっぱり、嫌か?」
そう質問されて大和へ視線を戻す。

大和はまた泣き出してしまいそうな顔をしている。
そんな、捨てられた子犬のような顔をされるとほっておくことができなくなってしまう。
ずるい。
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