狼上司と秘密の関係
それからふたりで朝食を作って仕事へ向かう準備をした。
着替えを持ってきていないから昨日と同じ服だけれど、仕方ない。

鋭い梨江が詰め寄ってくる姿が浮かんでくるようだった。
「保育士には戻らないのか?」
大和が運転する車の中で不意にそう質問されて千明は驚いた。

「え?」
「話を聞く限り、やっぱり保育士の仕事も向いてるんじゃないかと思って。それに頑張って資格も取ったんだろ? 使わなきゃもったいない」

そんなことはわかってる。
千明だってこれまでに何度か再雇用してもらえそうなところはないかと、探したりもしてきた。
だけどその度に親からのクレームを思い出してしまって、足踏みをしてしまうのだ。

「今の仕事でも、子供たちと関わることができるから」
それはそれで幸せな時間を過ごすことができている。
強がりでもなんでもない、本心からそう思っている。

子供と一緒にいられる仕事は、なにも保育士だけじゃないと気がついたのだ。
「それならいいんだけど」
それでも大和はどこか煮え切らない様子で、そう呟いたのだった。
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