君の隣は誰にも譲れない

「そうですね、じゃあ最寄りの駅までお願いしてもいいですか?」

「あ、はい。じゃあ、少しここで待っていて下さい。あ、この傘持っていて下さいね。車はあちら側に停めますから、そこまではこれで歩いてきて下さい」

「は?君、傘なしで車までどうするんだ……」

「私はジーンズにパーカー。あなたはその立派なスーツ。ぬらして平気なのはどちらでしょう?それに、私はこれがあります」

 そう言って、パーカーについている帽子を被った。

「ね?」

 笑って見せたら、眉間にしわを寄せていた彼はフッと微笑んだ。笑うとびっくりするほどイケメンだ。笑顔がまぶしい。

「どんな服を着ていようと、レディを雨の中歩かせるようなことは出来ないな。僕と一緒に相合い傘して車まで行こう」

 そう言って、私の手からさっと傘を受け取った。傘を差して、見とれている私の背中を軽く押して、自分の横に立たせた。

「さあ、行こうか」

「はい。すみません」

「それはこっちの台詞だよ」
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