水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「マーメイドスイミング協会の公認マーメイドは、7月1日付で里海水族館との契約を終了する」

「長いようで短かったな」

「一年間、あっという間でした」

「はーっ、もうちょっとで終わりかぁ……」

「結局、最後まで最後の1人は一切顔を出さなかったね」

「ああ……うん……。最後の一人はね、事情があるから……」



 久しぶりにマーメイドスイミング協会のマーメイド達が9人集まり、円陣を組んで口々に感想を言い合う。

マーメイドスイミング協会の公認マーメイドとマーマンは10人。最後の一人については会長だけが所在を知っているのだが、事情があるらしく、集まりにも一切顔を出していない。

 真央は無理を言ってマーメイドやマーマン達を1年間里海で働かせた手前、事情のある10人目の一切姿を見せないマーメイドに文句を言う権利はないと感じているため、苦笑いをするしかないのだが……。会長は何故か、10人目の話をしたあと真央を見た。



「会長?」

「最後くらいは……ね。やっぱり、10人でやりたいとは思っているのよ」

「でも、事情があるって」

「そうね。でも、真央が頼み込めば……彼は……」

「彼?マーマンなのかよ」

「4人目のマーマンだ!」

「あまりいい数字ではありませんね……」



 仲間たちが茶々を入れたことでその話はたち消えになってしまった。

 会長曰く、7月1日にマーメイドスイミング協会の公認マーメイドが手を引くことは2ヶ月半前から告知をして、クラウドファンディングのリターンとして観覧チケットを販売するとのこと。

 同時に、碧達が担当するペンギンやイルカのパフォーマンスショーの初回公演チケットもリターンとして販売。変わりゆく里海水族館をこれからも応援してほしいとの気持ちで2ヶ月間金銭を集めるとのこと。



「マーメイドスイミング協会の公認マーメイドとマーマンが全員参加する卒業記念ショーと、イルカやペンギン達のパフォーマンスショーは、クラウドファンディングのリターンとして目玉となる部分よ。1日持つかどうかは怪しい。最後だもの。個別チェキやグッズもリターンとして配布するけど、異論はないわね」

「意義な~し!」

「あとはマーメイドになりきったウミガメのウミちゃん、ペンギンとイルカのぬいぐるみを特典につけるわ」

「10人目のマーマン、呼べんの?」

「それは真央がどうにかしてくれるでしょう」

「へ!?」



 話を振られた真央は驚いた。

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