水槽の人魚は、13年越しの愛に溺れる
「こいつは高い所が好きだからさ。抱き上げてやればもしかしてと思ったけど……。いや、まじであぶねーわ。余力がねえと事故るってのがよくわかった」

「7匹が限界だな」

「確かに。今度からそんくらいセーブしとくわ……」



 10匹フルメンバーでは、1匹が調子を崩すと総崩れになってしまう。

 碧は深く反省したようで、今後は変えが効くように人数をコントロールしていくと海里に近い、反省点などを他の飼育員たちと共有し始めた。



「やっと一段落つけるね」

「ああ」



 閉園後、打ち上げに行くというマーメイドスイミング協会の誘いを断った海里と真央は、里海水族館の入場口に居た。

 海里は8年ぶりに外に出たようで、紫京院の手が入った水族館の外観に難しい顔をしていた。



「……センスを疑うような外観だな……」

「うん。お金が手に入ったら、元に戻そうよ」



 何よりもリニューアルオープンの際に塗装された外壁の色が気に食わない。

 13年前、里海のカラーリングは緑と青で統一されていたが、なぜか現在の里海水族館の外壁は紫京院グループの施設であることをアピールするためか紫色に塗装されていた。



「ありがとう、真央」

「もう、海里ったらお礼ばっかり」

「真央がいなければ俺は外に出られなかった。真央のお陰だ。こうして外にでて里海の外観を見れたのも、碧が戻ってきて、経営権を取り戻し、借金を返済できたのも……」

「うん」



 これからも頑張ろうねと、二人は月明かりの元で強く手を握り合った。
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