身代わりお見合い婚〜社長に溺愛される365日〜

あの日から始まった

藤堂寺家に挨拶を終え、家に帰ってきた私と貴富さん。

 部屋着に着替えて、ソファで休んでいると貴富さんがノンカフェインの珈琲を作ってくれた。

「ありがとうございます」

 マグカップを受け取り、貴富さんの目を見てお礼を言うと、貴富さんは優しい眼差しをくれた。

 貴富さんはいつだって優しいし甲斐甲斐しく世話をしてくれる。子どもが生まれたらどんなお父さんになるのだろう。きっと子煩悩で過保護な父親になりそうな気がする。

 マグカップを両手で持ちながら、ふふふっと笑っていると、私の隣に腰かけた貴富さんが不思議な様子で覗き込む。

「なにを笑っているのですか?」

「想像しちゃったんです、貴富さんが子どもに振り回されている姿を」

「あ~……」

 自覚はあるらしく、貴富さんも苦笑いした。

「今日は驚きの連続でした」

 貴富さんは背もたれに寄っかかりながら、感慨深げに天井を見上げた。

「私もです」
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