身代わりお見合い婚〜社長に溺愛される365日〜

終わった初恋

初めての恋は、最悪な形で幕をおろした。

 布団にくるまりながら、いつまでも枯れない涙に途方に暮れる。

(社長、びっくりしただろうな……)

 突然拒絶されて、理由も話さず家を飛び出した。そして、着信拒否。

 私が逆の立場だったら、困惑通り越して、怒りが芽生えて、そして悲しくなる。

『すみません、なにか、僕、気に障るようなことをしてしまったでしょうか?』

 あの時の社長の言葉を思い出す。捨てられた子犬みたいな目で私を見ていた。

 社長はなにも悪くない。悪いのは全部私。

 踏み込んじゃいけなかったのに、触れてはいけない相手に身を預けた。全部私の意思が弱いせい。

 有紗は、初対面の相手に手を出してくるなんて! と怒っていたけど、私がちゃんと断れば社長はなにもしてこなかった。受け入れてしまった私のせい。社長に触れられて喜んでいた馬鹿な私のせい。

 自分がこんなに流されやすかったなんて……と思っていたけれど、そうじゃない。

 流されたんじゃない、求めたんだ。あれは、私の意思だった。
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