運命の人のために婚約破棄したのに、そんな言い方は良くないと引かれて捨てられた不憫な王子様。なんだか可哀想なので、ここは私が慰めてあげようと思います。
 ざざっと打ち上がる高い波の音が響いた。

 ここは、高い城壁の上……戦いの際に攻略する難易度を上げるためか、険しい崖上に建てられた王城では、この時間美しい夕陽が見えている。

 物憂げな様子で城壁にもたれ、見張り用の穴から海に落ちる夕日を覗いている彼はエトランド王国世継ぎの王太子でロシュ殿下。

 あれが、私がここに来た目的の人だ。

 麗しく整った顔立ちと金髪碧眼で、王子とはかくあるべきと言わんばかりな絵に描いたような正統派の王子様だ。私もこの城へ勤めることになった時、目の保養要員を見つけ歓喜したものである。

 彼は手痛い失恋の後で、私はそんな彼に一言でも慰めの言葉をかけたかった。

 だって……ロシュ殿下の現状はあまりにも、可哀想だもの。
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