運命の人のために婚約破棄したのに、そんな言い方は良くないと引かれて捨てられた不憫な王子様。なんだか可哀想なので、ここは私が慰めてあげようと思います。
「あのっ……ロシュ殿下、元気出してください! きっと、良いことありますよ!」

 いかにも仕事終わりなメイド服姿の私が彼に声を掛ければ、彼は驚いてこちらを見るとわかりやすく顔を顰めた。

 城に仕える身分の低い者から哀れまれたのが、彼の自尊心を傷つけてしまったのかもしれない。けど、彼を少しでも慰めたかったし、こうして言えて良かった。

「慰めの言葉を、ありがとう……だがお前も、俺のことを馬鹿だと思ってるんだろ?」

 鋭い眼光を放つ青い目で見つめられ、私は両手を振って逃げ出したくなった。

「そそそ、そんなこと、思って……ないですよ?」

「嘘が下手なんだ。なんだ。その言い方は。目だって泳いでるし……絶対に俺を馬鹿な男だと思っている。演技は下手で見ているだけで、心の中が伝わる……悔しい。恥ずかしい……死にたい。全部一からやり直したい……」

「待ってください! 私はロシュ殿下のこと、馬鹿だなんて……思ってないです!」

 とてつもなく不憫で、とてもとても可哀想だとは思っていますが!

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