偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 だから夫婦としての時間を重ねて、花穂の心が自分に向いたと手ごたえを感じたときに、告白しようと思っている。

 それまではどんなに妻が可愛くて、愛おしくても手を出さないように耐えるしかない。

 心身の熱を冷ましてバスルームを出た響一は、グラスに冷たい水を注いた。

 朝から動き回って疲れた様子だった花穂は休んだようだ。

 響一はリビングのソファに腰を下ろした。ふたりで決めた海外生産のレザーソファはゆとりがあるサイズで座り心地が最高だ。

 響一はすっかり気に入り、早くもくつろぎ空間になっている。

(いつか花穂と並んで座れたらな)

 想像するとつい笑みがこぼれる。響一が口元を綻ばせたとき、スマホが淡く光った。

 手に取り確認すると広斗からのメッセージが届いていた。

 祖父の腕に湿疹が出来ていたから医者に診せた方がいいんじゃないか、という報告だ。

(そういえば日中出かけていたな。広斗のところに行ってたのか)

 祖父は広斗の様子を気にして、ときどき呼び出したり、自ら出向いている。

 広斗は祖父に口うるさく言われるのを嫌っているが、幼い頃から両親に変って面倒を見てくれた祖父に感謝をしており呼び出されると面倒そうにしながらも断らない。

 湿疹に気付いたのも、祖父を心配しているからだ。
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