偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 響一が名乗った途端、輝が戸惑ったような声になった。その変化が気になり響一の影から様子を窺う。

 輝は信じられないといった表情で、響一を見ていた。

「まさか六条ロジコムの?」

「ご存じですか? うちのグループ会社ですが」

「うちの……」

 輝は顔色を変えて響一を凝視している。

「き、急用を思い出した」

 彼はそう言い捨てると踵を返し無言で立ち去ってしまった。

(え、どうして?)

 あれだけしつこかったのにあまりに呆気ない終わり。

 花穂が戸惑っていると、響一が心配そうに見つめてきた。

「大丈夫か?」

「はい響一さんが来てくれたから。でもどうしてここに?」

「花穂ひとりじゃ荷物が重いんじゃないかと思って迎えに出たんだ。一本道のところまでなら行き違いになることもないだろうから。そしたら男に絡まれているのが見えて慌てて来た」

「そうだったんですね……ありがとうございます」

 本当に彼が来てくれてよかったと安心する花穂とは対照的に、響一は顔を曇らせた。

「彼が元婚約者だと言ってたけど」

「あ……そうですね。三年ちょっと前、東京に出て来る前にお見合いした相手です」

「お見合い?」
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