偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「ああ、あんたが花穂の夫か。結婚したなんて嘘かと思ったけど本当だったんだな。俺は花穂の元婚約者。偶然会ったから話していただけだけど」

 それの何が悪いんだとでも言いたそうな口調だった。

「それにしては妻は困っていたようだが。悪酔いしているのかもしれないが、今後はこのような真似は止めてもらいたい」

 響一の口調は丁寧なものだったが、声は冷たく彼の怒りが伝わってきた。

(響一さん、怒ってるよね)

 彼には輝のことどころか、以前婚約者がいたというのも自分から話していない。

事情を知らないところに、いきなり無礼な元婚約者が現れたら気分を害すのは当然だ。

「は? 偉そうに……ところで花穂の夫はどこの誰なんですかね? 初対面なのに挨拶もなしですか?」

 輝がイライラした様子で言う。

 響一は輝よりも長身で細身ながら鍛えた体つきをしている。輝は花穂が知る限り自分よりも立場が弱い者には厳しいが、不利な相手に喧嘩を売るタイプではない。

 だから今ここで喧嘩になるとは思えないが、不穏な空気が漂い息苦しい。

「失礼した。花穂の夫の六条響一です」
「え? 六条って」
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