偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「あの人は私を、何をしても言い返せない弱い人間だと思ってるんです。実際婚約していた頃は喧嘩になるのが怖くて、理不尽さを感じてもろくに言い返せなかったから」
「花穂の優しさや気遣いを、当たり前だと受け止めて威張り散らしていたって訳か。自分の婚約者を大切に出来ないなんて、どうしようもない男だな」
「婚約者と言っても親同士が決めたお見合いだったから、初めから私が気に入らなかったみたいです。不本意な結婚婚約で彼もストレスが溜まっていたのかもしれない」
だからと言って輝の人を傷つける言動は許せるものではないが。
「ストレスが溜まったから花穂に当たることで解消していたのか? そんなに嫌なら初めから断ればいいだろう!」
突然声を荒げた響一に、花穂は驚き目を丸くする。
「き、響一さん?」
「あ、悪い。大きな声を出して。ついかっとした」
響一はそう言うと心を落ち着かせるように息を吐き、そのまま倒れていた自転車を引き上げる。
「驚かせてごめん」
「だ、大丈夫」
「お義父さんと箕浦さんが心配しているだろうし、そろそろ帰ろうか」
「はい」
輝とのいざこざで落としてしまった買い物袋を拾い上げて、自転車の前かごに乗せる。
自転車は響一が引き、ふたり並ぶ形でゆっくり歩く。