偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
「腕を掴まれていたところを見たけど、その前には何もされなかった?」

 響一が心配そうに花穂を見遣る。

「大丈夫。でもノンアルコールビールは落として大変なことになってるかも。他のものにした方がいいかもしれない」

 平気だと伝わるように笑って答えると、響一がほっとしたように目を細めた。

「せっかく花穂が買って来てくれたものだ。気をつけて開けるよ。お義父さんはまだまだ飲みたいようだったしね」

響一と話していると、輝との出来事で憂鬱だった心が癒されるようだった。

 彼はいつだって花穂を気遣い尊重してくれる。だから花穂も彼を大切にしたいと思う。

(響一さんが結婚相手でよかった)

 あんなに嫌なことが有った後だと言うのに、もう明るい気持ちになっていた。

 その後帰りを待ち構えていた父と響一は世間話や仕事の話などを始めたから、花穂は母の部屋に行き近況報告をして過ごした。

 午後五時前には実家を出て、響一の運転する車で東京の六条邸への帰路につく。

 道が混んでいたうえに夕飯は外食にしたため、六条邸の離れに着いたのは午後九時過ぎだった。

 順番にシャワーを浴びた後、ようやくほっと一息つけた。
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