偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 感想を言い合いながら食事をしていると、人が近づいて来る気配がした。

 視線を向けた花穂は思い切り顔をしかめてしまった。

「輝さん?」

 にやにやしながら近づいて来るのは、元婚約者の有馬輝だった。

(どうして彼がここに?)

 あの表情は花穂に気付き、何かいいがかりでもつけようとしているのだろうか。

 嫌な予感でいっぱいになりながら、何を言われてもかわせるように心構えをする。

 同時に響一を捜したが、先ほどまでいたはずの位置に彼の姿見えない。

 その間にも輝は真っ直ぐ近づき、花穂の前で立ち止まった。

「こんなところで花穂に会うとは思わなかったなあ、お前……」

 輝は挨拶もなく昔から変わらない嫌味な口調で話しかけて来たが、花穂の隣に座る伊那
に気付くと、ぴたりと口を閉ざした。

(もしかして私ひとりだと思ってたの?)

 花穂を見つけた途端、周囲の確認もせずに突撃して来たというのだろうか。

 半ば呆れて輝の様子を眺めていると、彼は取り繕った笑みで伊那に話しかけた。

「加納社長の妹さんですよね?」
「そうですが、あなたは?」

 伊那の声は無礼とも感じるくらい素っ気ないものだった。
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