偽装結婚から始まる完璧御曹司の甘すぎる純愛――どうしようもないほど愛してる
 どうしても必要な言伝ならば今ここで言えばいいのだ。

「は?……プライバシーの問題があるからここでは言えないんだよ」

 輝は激しい怒りを見せたあと、伊那にちらりと視線を遣りながら言う。

 拒否していると言うのに諦める様子がない。

 だからと言って輝とふたりきりになるなんて、罠(わな)にかかるようなもの。

 人目がないところに移動するのは危険だと分かり切っている。

 とは言え、これ以上輝が騒いだら周りに気付かれてしまうかもしれない。ただでさえ花穂は注目を集めているのだ。

 些(さ)細(さい)な出来事でも悪意を持って受け止められたら、響一の迷惑になるかもしれない。

(どうしよう……)

 響一はまだ戻りそうにない。困っていると伊那がすっと椅子から腰を上げた。

「伊那?」
「私が外すから、ここで話すといいわ」
「え? いやでも」

 予想外の展開なのか輝が動揺を見せる。

「小さな声で話せば周りに聞こえないから、プライバシーは保たれるでしょう。話をするだけなんですよね? 何も問題ないじゃない。それとも他に何かあるの?」

 問い詰められて、輝は言葉に詰まる。
< 187 / 214 >

この作品をシェア

pagetop